仕事の勤務地が変わった。


新しい勤務先に、ボクはCBで出勤した。
職場に着くと、早々に上司からの呼び出し。
 
「うちの職場ではバイク通勤は遠慮して欲しいんだが....」
「は、はい。すみません。わかりました....」


この上司…前から噂に聞いていたけれど、
かなり神経質で、口うるさそうな人。

仕事の内容についても、
ホントに事細かい…シビアな上司だ。

みんな煙たがってる…。
やっぱりなぁという感じ。










 
それから1ヶ月ほど経ったある日…。その上司が声をかけてきた。

「次の土曜日、無理を言うけど出勤してもらえないか?」
「え?はぁ…」
「明日は久しぶりにバイクで来なさい。休日出勤だからね」
「は、はぃ…?」
 
わけがわからないまま…
その日、ボクはCBで出勤した。

裏門から入り駐輪場に向かうと、そこにゴールドウイングが一台…。
「ぇ? 見慣れないバイクじゃん…?」

少し離れたところにCBを停めてヘルメットをぬぐと
事務所の玄関から革ジャンに身を包んだライダーが…






「ええぇぇっっ」
思わず驚きの声が…

ヘルメットを抱え、ニコニコ笑ってるのは…あの上司だった。


「今日、時間あるか?」
「は、は、はぃっっ」
「ちょっくら行こうか? 昼飯おごるよ」

すっかり打ち解けてしまったボクと上司。
職場の上下関係の枠をとっぱらったライダー同士の時間。

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職場では部下から鬱陶しがられる堅苦しい上司…。
しかし週末には、
どでかいバイクを自在に駆る、気さくなひとりのライダー。


ONとOFFを憎いくらいきっちり使い分ける…

そんな彼に
ぼくはいつしか親近感と尊敬の念を抱くようになった。








それから何度か週末になると
CBとゴールドウイング…2台で走るTouringを楽しんだ。


もちろん、勤務時間中はバイクの話題は一切なし。
僕ら二人の暗黙の了解。









その日は、5月連休の中日。
ホントよく晴れた朝だった。


あまりに気持ちのいい天気だったので、
ボクはこっそりとCBで出勤してしまった。


今日ぐらいいいよな…



しかし、早々に彼に呼ばれる。

「うちの職場ではバイク通勤は遠慮して欲しいんだが....」
「は、はぃ、つ、ついうっかり…」
「で… 明日は空いてるか?」



彼の目が笑っている。
僕の目も…笑っていた。