阪神大震災

あの大震災とSRX

その日の夜明け。

もうすごい揺れと
これまで聞いたこともないような轟音で

ベッドから飛び起きた。


部屋の家財道具はもうめちゃめちゃ。
あちこちの窓が割れて、
居間のカーペットの上はガラスの破片だらけ…。

毛布にくるんだ我が子を抱きかかえて
一目散で、近所の小学校のグランドへ。




夜が明けて
そこに現れたのは、見るも無惨な我が町。






悪夢だった…。
新築して半年の家が半壊に。

ガレージの車もボロボロ。
家の中の部屋は、もう足の踏み場もない状態…。





当時乗っていたオートバイは、YAMAHAのSRX。
崩れたガレージの屋根の下だった。

でも、
あの大震災の中
オートバイなんて、もうどうでもよかった。



知人や親戚の安否確認を急がなくては…
そして
我が身自身
今から何をどうすればいいのか…

途方に暮れる…
その言葉がまさにぴったりの朝だった。















愛車SRXのキックを踏み下ろすことができたのは
あの日から半年後。

季節はもう、夏を迎えようとしていた。




ガレージにずっとほったらかしだったSRX。

ベコベコに凹んだタンク。
車体のあちこちに浮かび始めた錆び。

埃まみれになった愛車を見て
なにか、たとえようのない虚しさを覚えた。


いつまでも凹んでて…どうなる?
もう一度、
こいつにまたがってみようか…。









その夏の終わり
修理を終えたSRXとともに、ぼくは九州に渡った。




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神戸ナンバーのバイクを見て
いろんな人が温かい声をかけてくれた。


「そうだよなぁ」
「くよくよしてても、どうにもならない」
「がんばらなきゃな…」




凹んだボクに、
十分すぎるほどの元気をくれた九州の大地。

そして、
ツーリングの楽しさを思い出させてくれたSRX。










悲しいことや辛いこと…
バイクに乗れば、それが吹っ切れるわけではない。

でも
いろんな思いを引きずりながらでも
バイクに跨がることで
少しずつ前向きになれる僕らがいる…。



20年前
608ccのシングルエンジンはそれを教えてくれた。





 


 

あの日のバイク乗りたち 

「よぉ! 思ったより元気な顔してんじゃん」
「無事でよかった、よかった」


あの大震災の数日後。


ボロボロに壊れた我が家の前に
3台のオートバイが停まった。






がれきの街を
駆け抜けてきてくれたバイク仲間だった。



「バイクじゃ何も積めないけど…」

そう言う彼らのバイクのリアバッグには
めいっぱい詰め込まれたカップ麺。


崩れかけた石垣に腰掛け
いっしょにすすったラーメンの味は
涙が出そうなくらいの美味さだった。




「で、SRXは無事だったか?」
「ぃや…しっかり転がってたよ」

「そっかぁ 大事に乗ってたのになぁ」



そういう彼らのバイクも
カウルやマフラーがボロボロ。

がれきだらけの道を
数十km…走りぬけてきてくれたのだから。



「まぁ そぉ気を落とすなや」
「またいつか 乗れる日が来るわな」






日が沈みかけたでこぼこ道を
走り去っていく3台のオートバイ。

ボクは
いつまでもいつまでも…見送っていた。















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