「おまえは手入れが悪い!」
「たまにはバイクを磨いてやれ!」
「へたくそがぁ、また転かしたかぁ」



学生時代、バイト代貯めてやっと買った中古のCB50。
でも、その店の店主が、絵に描いたような頑固オヤジ。

ホントにうるさいオヤジだった。
立ち寄るたびに聞かされるのは小言、文句ばかり。

cb5c


でも、仲間内ではなかなか腕のいいShopとの評判。

あまり長居したい店ではなかったけれど
バイクの調子が悪いときは
ぼやかれるのを承知で預けるしかなかった。





そんなある日
ボクは中型二輪免許を取得した。

選んだバイクはKawasakiの400…。
あのオヤジの店とはちがう店で見つけた一台。


もう400が、めちゃ楽しかった。
新しいカワサキのお店に入り浸り…。

原付のCB50なんて
調子が悪くなってオヤジのあの店に預けたまんま…。

いや、預けたことさえ忘れていたかも?

別に売ってもらうか処分してもらってもいいや
もう原付なんて乗ることないし…








それは夏の終わり…だったと思う。
仲間と400を連ねてツーリングに出た帰り道。

偶然通りかかったあのオヤジの店。


「ちょっと久々に寄って見るか?」
「あの文句たれのオヤジ…どしてるだろ?」


でも、店にはあのオヤジはいなかった。





カラダ壊して入院して
その店は、息子とおばちゃんに任されていた。

「あのオヤジ…入院したんだ」
「あんな元気だったのにな…」




そして
早々に店を出ようとしたそのときだった。

ボクは…「それ」を見てしまった。



店の奥に見覚えのあるバイク…

そう…  ボクのCB50だった。




ぴっかぴかに磨き上げられ
まるで別物のバイクかと思うくらい…


「あ、あのバイク…」
指さすボクにおばちゃんが教えてくれた。

「ああ あれね? 預かり物のバイクなんだとか…」

「え…」

「しっかり整備しておいたから、持ち主が取りに来るまで絶対に置いとけって」


cb5b



1ヶ月後…
オヤジが店に戻ったと聞いて、ボクはあの店を訪ねた。

CB50にまたがって…





お礼の気持ちで
ボクが差し出すクッキーの箱を見たオヤジ…

「ばかたれがぁ 年寄りがこんなもん喰うかっ」


いつもの文句垂れながら…でも受けってくれたオヤジ。




油まみれの手が
その日はなぜかとてもおおきく…  見えた。

※画像はイメージです